「マイクロフォンの種類と構造」でも述べたように、マイクにはダイナミックマイクとコンデンサーマイクがあり、それぞれには特徴があります。様々な違いがありますが、決定的な違いは、「価格」、「音質」、「取り扱いやすさ」にあると言えます。
■価格
圧倒的にダイナミックマイクの方が安価のものが多いです。ライブやレコーディングにもよく使用される代表的なダイナミックマイクにSHUREのSM58やSM57があります。こちらは1万円前後で購入可能です。一方、コンデンサーマイクは、比較的安価なものからとっても高価なものまであります。安いものでも2万円前後、高額なものになれば50万円以上するものもあります。コンデンサーマイクの代表格としてNEUMANNのU87やU67がありますが、これはおよそ25万円以上します。しかし特別ハイエンドというわけでもなく更に高額なコンデンサーマイクも存在します。低価格ながら定番のコンデンサーマイクとしてRODEのNT1がありますが、こちらでも2万円程します。定番のダイナミックマイクと比べても倍ほど価格が変わってきます。
■音質
これは数値で表せるものではなく、個人の主観で判断されるところが大きい為、どちらの方がより良いとは言い切れません。しかし、一般的にはコンデンサーマイクの方が音がいいと言われています。各マイクにも個体差がある為、ダイナミックマイクの方が好きな音(目的の音)がとれるということは多々あります。
音質による差は構造的な違いから生まれます。音は音波となって伝わるのですが、音波の波形の振り幅で音量が決まり、波形の波が細かいほど高い音になり、緩いほど低い音になります。波が細かいというのは周波数が高いことを意味します。周波数は1秒間に何回空気が振動したかということを指しHzで表します。この振動がいかにきれいに録れるかでマイクの性能が決まります。一般的にダイナミックマイクは構造上、細かな振動には対応しきれないという弱点があります。つまり高音域が苦手という問題です。コンデンサーマイクはダイナミックマイク程、振動系を大きく動かす必要はありません。導電性の膜が音域に関係なく振り幅が一定という特性があり、実際の振動ではなく静電容量の変化を見ているので、音域による得手不得手がなく、クリアな音が録れるという特徴があります。逆にダイナミックマイクは高音がクリアでない為、柔らかい音が録れるという特徴があります。柔らかい音が好きか、硬い音が好きかといった音の好き嫌いになりますので、実際のところどちらのマイクの音質がいいということに結論は出せません。
■取り扱いやすさ
「さすがに高価なだけあって、高音質なコンデンサーマイク。これさえあれば他にマイクは要らない?」そんなことはありません。コンデンサーマイクがダイナミックマイクに勝っている点は音質だけです。(それもいいという基準があいまいですが…)そこが重要だという事実もあります。何よりも丈夫さが違います。コンデンサーマイクは取り扱いが非常に難しいです。価格は高い、ファンタム電源がいる(モノによっては専用のものがいる)、湿気に弱い(ノイズが増える)、振動に弱い(ふかれに弱い)といったデメリットがあります。またセッティングに関しても細かい音が録れる為慎重に取り扱う必要があります。ダイナミックマイクが丈夫だと言ってももちろん雑に扱ってはいけません。あくまで比較的丈夫という認識でいてください。
最終的にはダイナミックマイクにはダイナミックマイクのコンデンサーマイクにはコンデンサーマイクの良さがあるので、その特徴と構造をしっかり理解しておくことが、目的の音作りに生かされます。